わたしの働き方Vol.6 ~独立公認会計士インタビュー~

税理士法人タックス・アイズ パートナー 髙橋 知寿

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独立公認会計士の方々に,これまでのキャリアや仕事の軸などについて聞く本コーナー。今回は,20代の若さで税理士法人のパートナーを務める髙橋知寿氏。中小企業などを相手にする仕事へのスタンスや,パートナーとして心掛けていることなどを聞いた。

1 2つの偶然

─公認会計士を目指したきっかけを教えてください。

公認会計士を知ったのは,高校3年の大学受験が終わった頃です。明治大学は合格しましたが,第1志望は不合格。最初は浪人しようと思っていたら,当時通っていた塾の先生から「大学受験の借りは大学受験で返さなくてもいいんじゃないか。進学して別のものを目指したらどうか」と言われました。その時に「会計士という資格があるよ」と教えられたんです。「在学中に会計士の試験に合格して借りを返しますね」と言って上京してきました。

そこでもう一つ偶然がありました。上京して,会計士の受験用の本を買って読んでいたんです。やればできそうな気がしたので,明治大学の会計士講座に申し込んだら,講師がその本の著者だったんです。今,一緒に働いている五十嵐明彦さん(タックス・アイズ代表)です。塾の先生との出会いと五十嵐さんとの出会いが,会計士を目指したきっかけです。

2 相手に寄り添う仕事を

─試験に合格して監査法人に入所後,独立の契機というのはあったのでしょうか。

もともと「サラリーマン」にはなりたくない思いがあったんです。例えば大学生の時,アルバイトで3カ月くらいすると飽きてしまっていたので,40年も一つの会社で働けないんじゃないかと(笑)。でも,資格を取れば独立してもいいし,安定を求めて監査法人で働いてもいいし,選択肢が増える。

2年の実務経験を積むと会計士の修了考査があり,合格したら辞めようと思っていました。そのタイミングで五十嵐さんと再会し,「一緒にやらないか」と声をかけて頂きました。「タックス・アイズ」で職員として3~4年ほど働き,2017年1月からパートナーになりました。

あずさ監査法人は2年半という短い期間でしたが,当時教えてもらった仕事の経験は今も活きています。将来,我々のお客様で上場する会社が出てきたり,監査法人の方々に相談や仕事の依頼をさせていただくことが出てきたら,迷わずあずさ時代にお世話になった先輩方に連絡したいと思いますし,連絡するのを楽しみに今,仕事をしています。

─現在はどんなお仕事をされていますか。

主に中小企業に対する税務業務です。個人だと,所得税の確定申告や相続税の申告などです。中小企業の社長や経理の方と一緒に会社を良くしていこうという思いで仕事をしています。

─これまでに印象に残っている出来事はありますか。

ある方の損害賠償事件で弁護士さんと仕事をさせていただく機会がありました。我々はその損害額を算定させてもらったんです。その依頼者の方がどれだけ辛い思いをしたかなど,何度もお話を聞きながら弁護士さんと一緒になって仕事をした案件でした。それまでは,依頼者の方のために力を尽くすという経験が肌感覚として無かったのですが,依頼者のために働くことの良さや大切さを実感しました。相手の気持ちに寄り添って仕事をするその弁護士さんの姿も大変尊敬できるもので,私もそのくらい寄り添って,依頼者をどうしたら助けられるかを一緒に考えないといけないなと感じました。

3 資格はどこでも活用できる

─働き方という点では,監査法人時代と今を比べてみるといかがですか。

監査法人時代は一職員だったので,休日は休日,残業は残業でしたが,今はどちらかというと「一会計士」として生活している感じです。休日や朝晩も関係ないですし,困ったご相談があれば休日など関係無くご連絡いただくので,プライベートと仕事の区別がなくなりました。

─パートナーという立場から職員の働き方について心がけていることは。

会計事務所業界の離職率はとても高いと言われていますが,定年まで安心して働ける事務所をつくりたいと思っています。女性も安心して定年まで働いてもらえる法人にしたいですね。安心して産休や育休が取れ,その後も活躍し続けられる仕組みを作りたいです。

─会計士に必要な力は何だと思いますか。

やはりコミュニケーション力。この人に相談したいと思ってもらえる力は必要だと思います。ものすごく知識がある方がいる中で,依頼される人とされない人というのがいる。その差は,この人は自分の身になって考えてくれるかとか,この人に相談したいなと思ってもらえるかどうかだと思います。

─独立を考えている方々にアドバイスを。

会計士の資格があるからこそできることが会計面でなくてもあると思うんです。会計士である前に一社会人・一人間なので,どこに行っても会計士の資格が活きる。選択肢を広げるための資格なので,大いに活用してもらいたいです。あと,プライベートが充実しないと仕事も充実しないので,何でもいいから思いきりやるのがいいと思います。

髙橋 知寿(たかはし・ともひさ)氏

1989年2月16日生まれ。栃木県立大田原高校卒業後,明治大学在学中に公認会計士試験に合格し,2011年に有限責任あずさ監査法人に入所。13年から税理士法人タックス・アイズで税務業務などを手掛け,17年1月にパートナー就任。明治大学の会計士講座の特別指導員も務めている。趣味はゴルフで,「20代のうちに(スコア)70台を出したい」と意気込んでいる。