書評 町田 祥弘編著『監査品質の指標(AQI)』

(同文舘出版刊/本体3,400円+税)

金融庁総務企画局 審議官 古澤 知之

( 28頁)

会計監査は,資本市場の基本的インフラだが,現在,そのあり方・信頼性の確保が,様々な角度から問われている。我が国でも,2015年9月に設置された「会計監査の在り方に関する懇談会」において,

・監査法人のマネジメントの強化

・会計監査に関する情報提供の充実

・企業不正を見抜く力の向上

・監査法人ローテーションの検討を含む「第三者の眼」による会計監査の品質のチェック

といった幅広い課題について提言がまとめられ,順次,実行に移されている。

こうした検討・取組みは世界各国で進められているが,特に「会計監査に関する情報提供の充実」に向けた動きが加速しているのが,最近の改革の大きな特徴といえよう。

具体的には,個々の企業の会計監査において監査人が着目した会計監査上のリスク(監査上の主要な事項(Key Audit Matters:KAM))を監査報告書に記載するなどの「監査報告書の透明化」が,2015年に国際監査基準に導入され,EU諸国などで導入が進められている。米国でも,監査報告書に「監査上の重要な事項(Critical Audit Matters:CAM)」の記述を加えるなど監査基準の改訂が,2017年に採択・...