ハーフタイム 財政健全化への遠い道のり

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それは2018年2月の第2週から始まった。一時はトランプ政権による1.5兆ドルの大型減税に湧いた株式市場は,一転して大荒れになり,わが国にも直ちにその影響が伝わった。米国株急落の直接的引き金になったのは株価変動率の売りを組み込んだ金融商品だが,わが国経済との今後の関連で注目すべきは,財政赤字の拡大と長期金利の上昇であろう。

もともと今回の減税案は富裕層向けであり企業にとって浮いた資金を自社株買いに使うだけで成長効果は乏しいとみる意見が有力だった。しかもメキシコ国境沿いに巨大な壁を築く話など本来成長とは無関係な投資も含む。ワシントンには財政問題に無頓着なムードが漂い始めているとも言われている。結果的に,財政赤字拡大がインフレを招き,長期金利を上昇させるなど企業業績を引っ張るマイナス面を投資家に警戒させたのは当然であろう。

減税と財政出動による今回の財政赤字の拡大によって,米国の公的債務はGDPの2倍を超す最高水準に達するだろうと予測され,中国が米国債運用を見直しているというニュースが飛び交うと,米国債が売られて,長期金利は2.9%まで上昇した。利上げは本来,ドル高・円安になるはずであるが,逆...