私の会計史 theme18(最終回) 監査役時代(3)‐監査役は機能しているか‐

  藤田敬司

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はじめに

監査役としての経験の概略はこれまでのtheme16(本誌 No.3349 )とtheme17(本誌 No.3350 )でほぼ言い尽くした。だが最近の大型不正会計事件が脳裏をかすめると,監査役のあり方について一言触れないわけに行かない。

世の中には監査役制度に対する拭い難い不信感あるいは諦観がある。法制度的には監査役の権限は強化されてきたが,目ぼしい結果は見られない。

監査役に代わって社外取締役による監査委員会制度も導入された。だがそれを率先導入した企業にあっても,経営者によって制度の趣旨は簡単に無力化され,会社の存続すら危うくするほど深刻な不正会計が発生した。専門誌『會計』は2016年と2018年に2度に亘って不正会計特集を組んだ。だがいずれにおいても,会計監査論や管理会計面からの議論あるのみで,監査役による統制機能への言及もなければ会計士監査への協働期待も見られない。

監査役監査の機能向上策は,とても片手間に書けるようなテーマではないが,ここでは3年間に考えたことをベースにして,あくまでもこれからの監査役監査のあり方について意見を述べてみたい。

最後に大学教師へ転身した経緯についても触れてお...