ディスクロージャーを巡る国際的な動向 第5回 IASB公開草案「『重要性がある』の定義」及びIFRS実務記述書第2号「重要性の判断の行使」の概要

企業会計基準委員会(ASBJ) 専門研究員 大津 喬章

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はじめに

本連載の第1回(No.3345参照)でご紹介したように,国際会計基準審議会(IASB)は,「開示に関する取組み」の一環として,重要性導入プロジェクトに取り組んでいる。そこで,IASBは,企業が財務諸表を作成する際に,どのように重要性の判断を行使するかについて困難を感じたことがあることを認識した。

これを受けて,IASBは,2015年10月に公開草案「IFRS実務記述書『財務諸表への重要性の適用』」を公表したが,IFRS基準には含まれない実務記述書を開発するのみではなく,IFRS基準に規定されている「重要性がある」の定義の精緻化も必要と判断し,重要性導入プロジェクトを「『重要性がある』の定義」(IAS第1号及びIAS第8号の修正)と「IFRS実務記述書『財務諸表への重要性の適用』」という2つに分割した。

その後,IASBは,2017年9月14日に,公開草案「『重要性がある』の定義」(IAS第1号及びIAS第8号の修正案)(以下「本公開草案」という。)及びIFRS実務記述書第2号「重要性の判断の行使」(以下「重要性の実務記述書」という。)を公表した。本稿では,本公開草案及び重要性の実務...