書評 岩田 悦之・平井 裕久 著/ZECOOパートナーズ(株)編『「見積る」「測る」将来会計の実務』

(同文舘出版刊/本体1,900円+税)

仰星監査法人 公認会計士 金子 彰良

( 37頁)

企業は新規事業への投資やM&A,不採算事業からの撤退やグループ内の事業再編,増資・借入といった資金調達など,事業機会に関するリスクを勘案しながら意思決定することを要請される。また,自社の企業価値を株主や投資家に説明する際には,事業計画とその裏付けとなる戦略シナリオを描いてコンセンサスを得ることが重要となる。これらの意思決定やコンセンサスは,いずれも現時点で入手可能な情報をもとに,事業の予見可能性を数値化する行為を含む点で共通している。

「将来会計」という言葉を聞くと,将来のある時点における"実現値"を当てるものや,経営者の想いも含んだ"目標値"を指すものを想像するかもしれない。私が著者の岩田氏から最初にこの本の企画を聞いたとき,「将来のことはわからないが,予測はできる」と言った言葉がとても印象に残っている。本書は前述の要請に応えるべく,企業価値を計数的に評価するための思考やツールを習得したい実務担当者に向けて書かれた本である。

第Ⅰ部「見積る」では,将来会計による業績予測・検証をするために予測財務諸表の作成方法を学ぶ。日本の会計学ではあまり触れてこられなかった「利益の質(Quality o...