インタビュー 期末監査期間等に関する実態報告書の公表について

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日本公認会計士協会 常務理事 手塚正彦

<編集部より>

 日本公認会計士協会(以下,協会)は2017年12月,会長声明「十分な期末監査期間の確保について」を発出すると同時に,「期末監査期間に関するアンケート調査結果の概要等(中間取りまとめ)」を公表した。そして今年3月15日には,同調査結果の最終版という位置づけの「期末監査期間等に関する実態調査報告書」を公表。期末監査現場の繁忙の実態が明らかになった。本誌では,協会の手塚正彦常務理事に,これら一連の公表の背景と,同報告書のポイントについて話をきいた。

1.公表の背景

─「期末監査期間等に関する実態調査報告書」等の公表の背景を教えてください。

手塚氏  協会は,かねてより監査現場の繁忙が監査品質の維持に影響を及ぼしかねない状況にあるのでは,との問題意識をもっていました。今回の報告書は,こうした懸念に基づき,現場の実態を把握するためにアンケートを実施した結果のとりまとめです。調査は11の監査法人にご協力いただき,協会がランダムに抽出した3月決算の上場会社200社の監査業務について,実際に現場に携わる監査業務従事者から回答を得ました。

近年,政府の成長戦略において企業情報開示の効率化が謳われていますが,協会としては以前から,金融商品取引法と会社法の2つの制度が併存していること,また,監査の対象外である決算短信を監査人がチェックする慣行等が,十分な期末監査期間の確保を困難とする要因のひとつとなっていると考えてきました。協会は,会社法と金融商品取引法との開示・監査制度の一元化による効率化を検討するプロジェクトを立ち上げ,2015年には開示・監査の一元化と,信頼性ある情報開示のための十分な作成期間,監査期間の確保を主張する「開示・監査制度の在り方に関する提言‐会社法と金融商品取引法における開示・監査制度の一元化に向けての考察‐」という提言を公表しました。その後,2017年2月に東京証券取引所が決算短信の簡素化と,監査が不要であることを明確化したことを踏まえ,あらためて会員各位に十分な期末監査期間を確保するよう要請しております。また,2017年3月の会長声明「昨今の働き方改革の議論を踏まえた決算に関する業務の在り方について」においても,働き方改革の文脈の中で,企業側と監査人双方の決算の繁忙の緩和と監査期間・時間の確保を訴えています。

今回の報告書と...