インタビュー 監査基準の改訂 公開草案の公表にあたって

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甲南大学   共通教育センター 所長 伊豫田 隆俊

企業会計審議会監査部会は5月8日,監査基準の改訂についての公開草案を公表した( 本号13頁参照 )。「監査報告書の透明化」のため,「監査上の主要な事項」(いわゆるKAM)の記載を求めることが改訂の主旨で,6月6日まで意見募集をしている。

本誌はこの度,企業会計審議会監査部会の部会長である伊豫田隆俊・甲南大学共通教育センター所長にインタビューを実施。公開草案のポイント等について話を聞いた。

1.監査基準改訂の経緯

─今回の監査基準改訂の経緯をお聞かせください。

我が国を含め,国際的に採用されて来た従来の監査報告書は,記載文言を標準化して監査人の意見を明瞭に記載する,いわゆる短文式の監査報告書でした。しかし,かねてより短文式監査報告書では,監査プロセスにかかる情報が十分に提供されず,監査人の監査手続が見えにくいとの指摘がなされてきました。

こうした状況のもとで,英国では,会計監査の透明性を高めるため,財務諸表の適正性についての表明に加えて,監査人が着目した虚偽表示リスクなどを監査報告書に記載する制度が導入されましたし,国際監査保証基準審議会(IAASB)...