押さえておきたい!改正税効果会計基準 第1回 改正の全体像

~段階的に改正された基準の全体像と実務ポイントを再確認~

有限責任 あずさ監査法人 公認会計士 前田 啓

( 16頁)

はじめに

近年,税効果会計に関連する会計基準及び適用指針が段階的に改正されてきたが,本年2月に,企業会計基準委員会(ASBJ)より企業会計基準第28号「 『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」 等が公表され,一連の改正作業がおおむね完了した。これを踏まえ,繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針から最新の会計基準までを総ざらいし,改正の全体像を押さえながら,実務上のポイントを3回にわたって解説する。初回は「改正の全体像」を取り上げる。

なお,文中の意見にわたる部分は筆者の私見であることをあらかじめ申し添える。

1.改正の経緯

我が国では,平成9年6月に「連結財務諸表制度の見直しに関する意見書」が企業会計審議会より公表され,併せて,改訂された「連結財務諸表原則」の中で,連結財務諸表の作成上,税効果会計を全面的に適用することが原則とされた。また,個別財務諸表においては,平成10年10月に,企業会計審議会より「税効果会計に係る会計基準」が公表されたことにより,税効果会計が適用されることとなった。

これらを受けて,日本公認会計士協会(JICPA)から,会計上の実務指針及び監査上の実務指針が公表された。当該...