インタビュー 会計基礎教育に関する実態等の調査について

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関西大学大学院会計研究科 教授 柴 健次

日本公認会計士協会(JICPA)は5月31日,「会計基礎教育等に関する実態等の調査報告書」を公表した。JICPAはこれまで,国民が社会で活躍するための会計の基礎的な素養(会計リテラシー)を身に付けるための「会計基礎教育」の普及を推進。2017年3月には会計基礎教育推進会議が始動し,会計基礎教育の充実に関する事業を進めている。同報告書は国内外の会計教育の実態把握を目的に,JICPAから依頼を受けた研究者チームが作成し,会計教育の必要性に関する4つの提言が行われている(No.3362・12頁に関連記事)。

本誌では,研究者チームの代表である柴健次・関西大学大学院会計研究科教授にインタビューを実施。会計基礎教育とは具体的にどのようなものなのか。また報告書公表の背景や今後の方針,子供たちへの会計教育のあり方などについて語ってもらった。

1 会計基礎教育とは

──会計基礎教育について,報告書公表の背景と合わせて教えてください。

私たち研究者は以前から,会計の教育について「最低限教えるべきことは何か」という基礎の部分を常に考え研究してきました。それは「会計リテラシー教育」というものです。リテラシーという言葉には,我々の社会における最低限の常識という意味もあります。今回,その流れの中で,JICPAの関根愛子会長から「会計基礎教育」の推進に関して,協力をお願いしたいという依頼を頂いたということです。

まず,報告書を作成するにあたり,私たちが「会計リテラシー教育」と呼んでいるものと,JICPAの掲げる「会計基礎教育」は果たして同じものなのか否かという議論がありました。結果として,「会計基礎教育」は「会計リテラシー教育」と同義のものとしています。ただし,会計基礎教育という言葉には,会計リテラシーだけではなく会計リテラシーを理解するための助けとなる関連知識の教育も含まれる場合があります。関連知識とは,我々が人間社会で生きていく上で習得すべきである「会計固有の技術とその背景にある考え方」,すなわち「会計リテラシー」だけではなく,例えば数学や算数,家庭科など,「会計に限定せず幅広い領域の基礎となる教科で教えられている知識」のことです。これらはまさに,会計リテラシーをよりよく理解する上で役立つ知識となりますが,会計リテラシーの立場から見ればまさしく会計基礎教育に当...