<INTERVIEW>わが社のIFRS15号対応 日本の収益認識基準の適用に向けたヒントをきく 第2回 中外製薬株式会社

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中外製薬株式会社 上席執行役員 CFO 財務統轄部門長 兼 IT統轄部門長 板垣 利明
中外製薬株式会社 財務経理部 経理グループ グループマネジャー 北川 陽子

<編集部より>

収益認識に関する会計基準 」が2021年4月1日以後開始事業年度より適用される。同基準は2018年1月1日以後開始事業年度より適用された国際会計基準(IFRS)第15号「顧客との契約から生じる収益」をベースとしているため,IFRS任意適用企業によるIFRS15号対応は,日本基準の企業にとって収益認識会計基準対応の先行事例として,参考になる点が多いことだろう。今回は,中外製薬株式会社(12月決算)の板垣利明氏と北川陽子氏に,IFRS15号対応について,どのように準備を進めたのか話をきいた。

1.ロシュ社との提携からIFRS任意適用へ

―はじめに,IFRSを任意適用した経緯から教えてください。

板垣氏  当社は2002年にF. ホフマン・ラ・ロシュ社(編注:スイスのバーゼルを本拠地に置く世界有数の製薬企業。以下,「ロシュ」)と戦略的アライアンスを開始しました。細かなビジネススキームの話は割愛しますが,資本関係では,アライアンス締結時に当社株式の50.1%をロシュが取得しましたので,当社はロシュ・グループの連結子会社となりました(現在の株式保有比率は59.9%)。ただし,中外製薬として東証1部上場を維持したまま,ビジネス活動をしております。

当社は,アライアンスまでは日本基準で会計処理をしておりましたが,アライアンス後はロシュにIFRSベースで財務報告を行うことが必要となりました。ロシュ用のIFRS基準のレポートと,上場企業として日本基準のレポートの両方を作成することになりました。

その後,2009年頃から日本でも2015年にはIFRSが強制適用されるという流れの中で,当社は既に2002年からIFRSに対応していたこともあったので,IFRSを早期に任意適用するべきタイミングだと判断し,2013年12月期より適用を開始しました。医薬品業界では最初のケースで,全上場企業の中でも13番目と比較的早い時期での適用でした。

2.IFRS15号の準備を開始 ―適用3年前―

―IFRS15号の適用に向け,どのような準備を進めてきたのでしょうか。

板垣 利明 氏

板垣氏 そもそもIFRSは原則主義ということもあって,ロシュではFGAR(...