押さえておきたい!改正税効果会計基準 第2回 繰延税金資産の回収可能性

~段階的に改正された基準の全体像と実務ポイントを再確認~

有限責任 あずさ監査法人 公認会計士 前田 啓

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はじめに

近年,税効果会計に関連する会計基準及び適用指針が段階的に改正されてきたが,この作業がおおむね完了したことを踏まえ,最新の会計基準までを総ざらいし,改正の全体像及び実務上のポイントを3回にわたって解説する。第2回は「繰延税金資産の回収可能性」を取り上げる。

なお,文中の意見にわたる部分は筆者の私見であることをあらかじめ申し添える。

1. 回収可能性適用指針の概要

段階的に改正された基準のうち,最も早く公表されたのが企業会計基準適用指針第26号「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」(以下「回収可能性適用指針」という。)である。これは,主に監査委員会報告第66号「繰延税金資産の回収可能性の判断に関する監査上の取扱い」(以下「監査委員会報告第66号」という。) における会計処理に関する部分について,基本的にその内容を引き継いだ上で,必要と考えられる見直しが行われたものである。

適用は,平成28年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から始まっており,3月決算会社の場合,進行中の平成31年3月期は適用3年目となる。これまでに2回の年度決算を終えたことで,回収可能性適用指針は実務...