ハーフタイム 「支配」が会計を支配するとき

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「顧客との契約から生じる収益」(IFRS15)では,わが国の収益認識基準でもそうだが,資産(モノ・サービス)の「支配:Control」が,顧客に対する履行義務の充足時点の決定や,その他重要な会計判断において活用されるべきキーワードになっている。

伝統的な実現基準では「所有権の移転」であったが,IAS18では「所有に伴うリスクと便益の移転」に移行,いまやIFRS15でも米国基準ASU606でも「支配の移転」時に収益を認識するようになった。正に「支配」が会計を支配する時代である。

法的所有権の所在と移転は認識し易いが,使用・賃貸・売却・担保など幅広く適用できるから,所有権の移転に目を奪われていると実態判断を誤り易い。とくに金融化によって複雑化したグローバル取引では,所有権者は必ずしも支配者ではないことが多いから,支配概念のほうがより的確に実態を認識できる。ただ支配の移転は,契約の形式ではなく取引の経済実態,資産から得られる便益の実効支配について的確な判断を必要とする。つまり「形式よりも実態重視」の原則が前提となる。だが社債売買取引による資金調達(まず保有社債を売り後日買い戻す現先取引)や資金運...