IFRS16号「リース」適用の留意事項 第3回 不動産の借手に関する留意事項

EY新日本有限責任監査法人 公認会計士・米国公認会計士 小山 智弘

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Ⅰ はじめに

本連載第2回( 本誌No.3378 )では,新たなリース会計基準であるIFRS16号「リース」(以下,新基準)におけるリースの定義について解説しました。新基準では,取引がリースの定義に該当する場合には,借手は,原則としてリース取引から生じる資産(使用権資産)および負債(リース負債)を貸借対照表に認識することになります。

本稿では,新基準の適用により,重要な影響が生じることが想定される不動産の借手の会計処理について,留意すべき主要な論点を解説します。特に,①リース期間,②リース料,③割引率,④原状回復コストに焦点を当てます。

なお,本稿は筆者の理解に基づいており,筆者の所属する法人の見解ではない点にご留意ください。

Ⅱ 借手の会計処理の全体像

不動産の借手は,賃借する物件を使用する権利である使用権資産と,貸手に支払うリース負債を,リース開始日に貸借対照表に認識します。<図表1>では,リース開始日において認識される使用権資産とリース負債の構成要素を示しています。

<図表1 当初認識における使用権資産とリース負債の構成要素>

これに対して従来のリース会計基準では,不動産の借手は,ほとんどの取引を...