Q&Aコーナー 気になる論点(225) 負債と資本の区分(6)

‐偶発転換債(CoCo債)‐

早稲田大学大学院 会計研究科教授 秋葉 賢一

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国際会計基準審議会(IASB)が2018年6月に公表したディスカッション・ペーパー(DP)「資本の特徴を有する金融商品」(FICE DP)では,一定の場合に普通株式への転換が行われる条項を備えた永久債を,資本とすることを提案しているのでしょうか。

FICE DPでは,自己資本比率の未達成など不確実な将来の事象の発生によって引き起こされる条件付決済条項が含まれていても,契約上の義務を回避する無条件の権利を有していない場合には,その義務を非デリバティブ金融負債に分類することとしています。条件性は,残りの権利及び義務に含まれ,金融資産,金融負債,又は持分金融商品に分類されるかどうかを検討することとしています。

<解説>

問題の所在

2008年の世界的な金融危機を経て,金融機関の自己資本比率規制であるバーゼルⅢでは,基本的項目であるTier1資本や補完的項目のTier2資本に算入できる劣後債は,発行体が法的破綻には至っていなくても,一定の場合に元本削減又は普通株式への転換が行われる条項①を備えた永久債であることが必要とされています。これは,偶発転換債(CoCo債:Contingent Conver...