金融商品会計基準の改正について(下)金融機関の適用上の課題・IFRS第9号「予想信用損失」

有限責任あずさ監査法人 公認会計士 太田実佐

( 26頁)

1.はじめに

本稿では,金融商品に関する会計基準の改正についての意見の募集(以下,「本意見募集」)にあたって企業会計基準委員会(以下,「ASBJ」)が予備的に識別した適用上の課題を取り上げ,金融機関における適用上の課題と財務上の影響について解説する。その中でも特に,銀行等金融機関において主要な論点の一つとなる金融資産の減損を取り上げる。

なお,文中では日本基準とIFRSの概要を示している箇所があるが,会計基準が与える影響の概要を示すことを目的としており,網羅性をあえて捨象している点についてご了承いただきたい。

文中の意見に係る部分は筆者の私見であることをあらかじめ申し添える。

2.金融機関への適用上の課題

本意見募集においては,検討対象の3分野11項目にわたり,主に,IFRS又は米国会計基準の基準本文(適用指針を含む)の内容を我が国に導入した場合における予備的な適用上の課題の分析を行っており( 本誌No.3383 ),その中でも,現行日本基準の金融商品会計をIFRSと整合性のあるものとする場合,特にご意見をいただきたい事項が挙げられている(図表1参照)。

【図表1】本意見募集で特に意見が求められている...