ハーフタイム 法(law)に近づくIFRSの会計概念

( 37頁)

A. C. リトルトンは『会計発達史』(1952)で,会計基準は会計実践の用具であり,比較・判断の基礎であると論じ,他方,普遍妥当性と不変性を与えるのが会計原則だと述べた。「法と法律」の関係も「会計基準と会計原則(IFRS概念フレームワーク)」のそれに近い。

法律(Regulation)は議会によって人為的に作られた具体的なルールであるが,法は人間社会のルールであり,行為の「普遍妥当性」や「道徳性」を表すルールである。このように法に道徳性を持ち込むことに反対する法実証主義者(概念や良識ではなく実定法のみを重視する人々)もいるが,英国のH. L. A. ハートは同じ法実証主義者であっても実定法だけでなく人間の良識を重視する。彼の名著『法の概念』(ちくま学芸文庫)によれば,「法律は明確であり確実であるように見える。他の機会にどうすべきかを知るためにも推測するとか思いめぐらす必要がない」。よって,"悪法もまた法(Rule)なり"となる。

「ところが,人間である立法者には,未来に生じるかも知れないあらゆる可能な状況を予期する能力は無い」。だから,そのような法律の不備を悪用する事件は珍しくない。旧日...