[全文公開] 本誌が選ぶ 2018年"経財"5大ニュース

( 10頁)

平成最後の1年となった今年も会計や監査について様々な動きがありました。本誌は2018(平成30)年を振り返り,今年を象徴する5大ニュースを選定しました。

長期にわたる開発期間を経て,ついに「収益認識に関する会計基準」が公表されました。原則適用は2022年3月期の期首からとなりますが,本誌の調査では2019年3月期からの早期適用予定を開示した会社もあります。

収益認識基準は,業種,業態,取引別に様々な論点があり,場合によっては契約の見直しやシステム対応が必要となることも考えられます。また,損益計算書のトップラインである売上高に影響が生じる改正であることから,マネジメント層の関心も非常に高いようです。今後は企業会計基準委員会(ASBJ)において開示に関する検討が残っており,その動向も注目されるところです。

今年の「経営財務」を振り返りますと,「税務通信」とのコラボ座談会の開催のほか,日本基準企業にとっては先行事例となるIFRS15号適用企業へのインタビューの実施や,さらに記者による個別論点の特集記事の掲載など,収益認識基準の特集に取り組んだ1年でした。特に編集部で話題となったのは「ポイント」の取扱いです。日本のポイント制度は多種多様で,会計上の論点が盛り沢山でした。来年も収益認識特集に尽力してまいります。

今年7月,「監査上の主要な検討事項」(KAM:Key Audit Matters)の導入等をその内容とする監査基準の改訂が行われました。KAMについては2021年3月期からの原則適用よりも前に2020年3月期からの早期適用も可能となっており,本誌が実施したアンケート(有効回答:109件)では東証一部上場会社の2割程度が早期適用を予定しているという結果になりました。

この監査基準の改訂は,監査報告に関する約70年振りの大きな改正ともいわれ,日本の会計監査の透明性の向上とともに,会計監査制度の信頼性の確保に資することが期待されます。とはいえ,まだまだ企業サイドでは本格的な準備には至っておらず,情報収集段階にあるようです。KAMは監査人だけが取り組めば良いという話ではなく,監査役等や経営者などの企業の財務報告プロセスに関わる関係者も含めて制度の主旨を十分に理解した上で検討することが必要ではないでしょうか。

金融審議会の「ディスクロージャーワーキング・グループ報告」において,企業と投資家との建設的な対話を促進していく観点から,企業の開示内容を共通化・合理化する「一体的開示」や,財務・非財務情報の開示充実などが提言され,各所で環境整備が進められました。本誌の調査では,役員報酬の記載方法を変更することで,事業報告と開示内容を一部共通化している事例などが確認されました。2019年もこうした流れが続くものとみられます。

また,今年はコーポレートガバナンス・コード(CGコード)の改訂が行われ,新たな記述として政策保有株式の保有に関する開示内容の拡充や,資本コストを意識した経営についても言及されています。改訂CGコードに対応するCG報告書の提出期限は12月末までとなっておりますので,念のため今一度対応状況をご確認ください。

今年2月の「税効果会計基準の一部改正」等の公表により,日本公認会計士協会(JICPA)の税効果会計に関する実務指針等をASBJに移管するプロジェクトが全て完了しました。本改正では,繰延税金資産(負債)の表示を全て固定区分に統一することや,繰越欠損金に関する情報の拡充といった見直しが行われました。

税効果に関する大きな改正はこれで一段落ですが,今後は,移管プロジェクトの終了後に改めて対応すべきかどうか検討するとしていた論点のうち「その他の包括利益に対する課税」,「100%子会社間での子会社株式等の売買に係る税効果」について,検討を進めることが決まっています。

IFRSを任意適用(または適用を表明)した企業数は約200社となりました。時価総額割合でも30%以上を占めており,市場におけるIFRS任意適用企業の存在感は年々高まっています。IFRSの任意適用を予定している会社,適用検討中という会社も含めれば,時価総額5割超えも視界に入ります。政府の成長戦略である「未来投資戦略2018」にも, IFRS適用企業の拡大を促進する旨が盛り込まれており,今後も更なる拡大が見込まれます。