収益認識基準に対応した法人税基本通達のポイント 第4回 収益の帰属時期①

和田倉門法律事務所 弁護士・税理士 石井 亮

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1.法人税法における収益の帰属時期に関する定め

収益認識基準では,企業は約束した財又はサービスを顧客に移転することにより履行義務を充足した時又は充足するにつれて,収益を認識することとされました( 収益認識基準35項 )。そして,一時点で充足される履行義務の充足の判定に当たっては,対価を収受する権利,資産に対する法的所有権を有していること,企業が資産の物理的占有を移転したことなどを考慮することとされました( 同40項 )。

他方,従来の法人税では収益の計上時期について実現主義,権利確定主義が採用されているとされ,法人税基本通達がその具体的な判断基準として「引渡しがあった日」(改正前法人税基本通達2‐1‐1,2‐1‐14),「役務の全部を完了した日」(同2‐1‐5)などと定めていました。そして,そこでいう「引渡し」等の判定にあたっては,同様の考慮要素を勘案することとされていました(同2‐1‐2等)。

平成30年度改正で新設された法人税法22条の2は,資産の販売等に係る収益の帰属時期について,このような収益認識基準と従来の法人税の取扱いに大きな乖離がないとの認識のもと,①別段の定めがない限り,その資産の販...