新春インタビュー エーザイ株式会社 代表執行役CEO 内藤晴夫氏

(聞き手:慶應義塾大学客員教授 西川郁生氏)
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エーザイ株式会社 代表執行役CEO 内藤晴夫

2019年の新春インタビューは,世界的に期待される認知症治療薬の開発などを進めているエーザイ株式会社の代表執行役CEOの内藤晴夫氏に話を聞く。同社はディスクロージャーの分野でも先進的な企業として評価が高く,昨年(2018年)は,日本IR協議会によるIR優良企業大賞を受賞している。選定理由のひとつには,「長年にわたって経営トップが投資家と対話し,中長期で目指す姿と経営課題を率直に語っている」ことが挙げられている。今回,会計・財務,ガバナンス,コンプライアンス等を中心に経営者の視点から,そのお考えを伺う。聞き手は,企業会計基準委員会の前委員長で,現在,慶應義塾大学客員教授の西川郁生氏。(以下敬称略)

会計・財務と経営 ~ESGやSDGsの財務的な評価が課題

西川  本日は,新年特別企画としてエーザイ株式会社の内藤晴夫CEOに,会計や財務さらにガバナンス,コンプライアンス等の主として管理的なテーマを取り上げ,経営者の視点からのお話を伺っていきたいと思います。早速ですが,永く企業経営をされてきたなかで会計や財務が,経営に対しどうあってほしいか,お聞かせいただけますか。

内藤  経営トップを30年以上続けてきていますけれども,いまほど環境がドラスティックに変わりつつある時期はなかったように思います。それは,よく言われるように第四次産業革命であったり,ソサエティ5.0という社会の到来であったりということだろうと思います。端的に言ってしまえば,第四次産業革命とはデータドリブン・エコノミー(Data-driven economy)であり,データについて改めてしっかりと見つめていかなければいけないし,そのデータの価値がどのように評価されて,それが財務諸表にどのように反映されるべきか,という課題があると思います。

もう一つは,ESGやSDGs(持続可能な開発目標)と言われる流れであり,これらは企業のサステイナビリティにとって非常に重要であるということで,投資家が投資判断に組み入れることが多く行われてきています。ESGやSDGs関連のさまざまな事業活動のなかには,当面,利益に結びつかないものもありますし,準備段階のものもあるわけです。しかし,そうした活動をしっかりとやっていかなければなりません。それをどのように財務諸表に反映させていくのかという問題もあろう...