時事談論 vol.21「金融監査は大丈夫?」

解説
( 34頁)

●監査報告書の透明化

最近,学者の先生たちと監査人たちが書いた本を手にしたら,今話題の監査報告書の透明化,つまりKAMが始まったのは,金融危機が大きな原因だったというようなことが書いてあった。

そういえば,2008年に破綻したリーマン・ブラザーズは,粉飾決算をしていたわけではなく,監査報告書もクリーンだったと聞く。同じ適正意見を出すにしても,その意見に達するまでに,監査人が何をしてその意見に至ったのかを明らかにするのが,監査報告書の透明化なのだという。

本当だろうか??

金融機関の監査の実態を見るにつけ,ついそんな疑問を感じてしまう。

近年はマイナス金利の影響もあって,金融機関,とくに地方銀行の経営状況が悪化していると言われている。かつてアグレッシブさを評価されていた某銀行では,実態の伴わない融資も行われていたことが明らかになった。

リーマン・ショックがきっかけでできた制度なら,そうしたことも,KAMを通じて透明になるのだろうか。

●かつての金融検査と外部監査

かなり旧聞に属する話だが,今から15年ほど前のこと,足利銀行が破綻し,公的資金が注入された。当時,社内の調査委員会の報告が公表...