楕円の思考と現代会計 ―2つの中心―

解説

大阪市立大学 名誉教授 石川 純治

( 34頁)

IFRSに代表される現代の会計は伝統的会計から大きく変容(変貌)・乖離してきている。このことにまず異論はないであろう。ただ,問題はその変容をどう捉えればよいかである。

この点は論者によって異なるだろうが,本小稿では特に2つの異なる中心をもつ楕円の見方,ないし楕円の思考が現代会計の特徴を捉える重要な視点になることを強調してみたい。

楕円形としてのハイブリッド会計

―円と楕円の見方

さて,現代の会計の変容をどう捉えるか。筆者はその見方に大きくは3つあることを(「拡張の論理」,「補完の論理」,「区別の論理」),いろいろな機会をとおして説明してきたが(放送大学でのTV講義など),例えば『変貌する現代会計』(日本評論社,2008年)第4章「変容の全体的捉え方」では変容の3つの見方をわかりやすく構図の形で示しているので,ここで再録しておきたい(図1の網掛部分は伝統的な収支配分型の会計)。

図1 変容の3つの見方

すなわち,前者の2つの見方(拡張,補完)はいずれも1つの中心(原点)を共有する円形として示されるが,第3の見方(区別‐これが筆者の見方)は2つの異なる...