【INTERVIEW】IAASBトム・サイデンスタイン新議長に聞く IAASBの取組みと今後の施策

解説
国際監査・保証基準審議会 議長就任にあたって
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7月1日に国際監査・保証基準審議会(IAASB)の議長に就任したトム・サイデンスタイン氏。就任後,初めてのアウトリーチ活動として東京を訪れた新議長に,IAASBが現在取り組んでいる施策や日本人関係者に対する考えなどを聞いた。(インタビューは7月18日に行った。)

議長就任にあたって

編集部 :議長就任おめでとうございます。これから会計監査人のための基準を設定する国際監査・保証基準審議会(IAASB)を率いることになりますが,サイデンスタイン議長は,これまでにどのようなキャリアを積まれてきたのでしょうか。

サイデンスタイン議長(以下,議長) :これまでのキャリアを振り返ると,共通するテーマがあります。いくつかの職場や仕事を経験してきましたが,私が好んで働いてきた組織はいずれも市場をより良くするために積極的な役割を果たしているということです。前職を務めた米国の連邦住宅抵当公庫・ファニー・メイでは,シニア・バイス・プレジデントとして,コーポレートストラテジーや資金管理,イノベーションなどの部署の管理を担当し,また,ESGの重要性についても検討しました。その前はIFRS財団(発足時の2001年から2011年末まで)におりました。私の中で国際基準作りに対する情熱が沸いてきたのはまさにIFRS財団での経験があったからだと思います。

市場関連分野の基準設定には様々な役割がありますが,現在,監査基準設定が果たす役割は極めて大切であると思います。そもそも,監査に関わる職業専門家は市場の信頼を確保するために非常に重要な役割を果たしています。今日の世界経済にあって「信頼」というものはとても重要であり,このような信頼を作り出すために,IAASBは効果的な貢献ができるものと期待しています。議長としての私の役割は,財務報告に関して企業が作成・報告するものの信頼性を高め得るものかどうかという視点から我々が行うすべての作業を見ていくことだと思っています。たとえそれが険しい道であったとしても,これまでの経験を活かしながら審議の舵取りをうまくこなしていきたいと思います。

監査報告改革について

編集部:IAASBにおける近年の大きな取組みと言えば,監査報告の改革があげられると思います。この改革の契機になったのが2008年からの金融危機でした。2012年から議長...