時事談論 vol.24「会計基準と経営の本末転倒」

解説
( 30頁)

●のれん,償却せず

これを読んでおられる方々は,「IFRSの特徴は?」と聞かれて,何とお答えになるだろうか?

私は迷わず「のれんを償却しないこと」と答える。IFRSの導入は紆余曲折あったが,その間にIFRSを導入したい某社のトップはヒアリングの際,この「のれんを償却しないこと」が財務諸表の比較において,重要な違いになり,日本基準に基づいて償却していることは,世界を相手に勝負するのに,明らかに不利だ,と主張していたと記憶している。もう10年近く前になるのだろうか。

それが今でも印象に残っていて,IFRSを使う企業には,「M&Aをやって生じたのれんの償却費が損益を圧迫せず,よほどのことが無い限り,のれんの減損もないから,絶対有利だと思っているのだろう」という先入観がある。

●比較可能性と会計基準

改めてこのようなことを申し上げるのも変だが,財務諸表の重要な目的の一つとして,他社との比較を容易にすること,がある。もちろん,他にも目的はあるが,株を買おうとすればわかるが,財務諸表を色々と比べてみるものだ。「お付き合い」で買うなら,どうせ市場価格で購入するのだから,財務諸表など見ないのかも...