減損会計目的の「動産評価」におけるマーケット・アプローチの実務上の適用方法

解説

株式会社ゴードン・ブラザーズ・ジャパン バリュエーション部 マネージングディレクター 野田 慧

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相次ぐ巨額減損

会計監査の厳格化やM&A件数の増加を背景に企業の減損事例が増加する中で,特にクロスボーダーM&Aでは,日本企業でも巨額の減損損失を計上するケースが増えている。最近では日本郵政のオーストラリアの物流大手トール・ホールディングスの買収において,2017年3月期に約4,000億円の減損損失を計上したことも記憶に新しい。

後述するように減損会計適用にあたり,保有する機械設備等の動産についても鑑定評価が行われることがあるが,減損評価は業績に与える影響の大きさのみならず,その後の工場閉鎖や事業撤退などの経営判断にも影響を与えうることに鑑みると,「適正な鑑定評価」は単に会計上の要請だけに留まるものではない。したがって,このような局面においては事業会社にとって経営判断に資する納得性・外部への説明責任を果たしうる客観性がある評価額を把握しておくことが肝要となり,それには経験豊富な動産専門の鑑定評価人の活用が有効である。

2019年7月には日本公認会計士協会が経営研究調査会研究報告第66...