書評 松山 遥・佐藤香織・中川直政著『ガイダンス 監査役・監査役会の実務』

解説

青山学院大学名誉教授/大原大学院大学教授  八田進二

(商事法務刊/本体3,500円+税)
( 34頁)

近年,加速する資本市場におけるコーポレート・ガバナンス改革では,社外取締役の導入を図ることで,取締役会による監督機能の強化を目指している点が挙げられる。しかし,近時の企業不祥事を見るに,単に社外取締役の数を増やしていたとしても,経営陣に係る不祥事は決してなくなってはいないのも事実である。こうした中,本書では,社外取締役と同様に,業務執行から離れた立場で経営陣の業務執行を監査する立場にある監査役および監査役会の運営実務について体系的な整理等を行っている。

本書は,弁護士である著者たちの実務経験を踏まえて,「法令・制度の解説ではなく,運営上の工夫・ノウハウや今後の目指すべき方向性に焦点を当てて,監査役・監査役会をめぐる運営実務を解説する」との視点から,以下の5章立ての構成になっている。

そもそも,株式会社の機関設計の違いにより,会社法上,監査役,監査等委員会設置会社における監査等委員および指名委員会等設置会社における監査委員による監査が規定されているが,本書では,これらを総称する形で「監査役...