ハーフタイム のれん会計の見直しについて

解説
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米国基準やIFRSの「減損のみ」(定額償却禁止)によるのれん処理は,“Too little, too late”(少額すぎて遅すぎる)と批判され,「定額償却法」や「定額償却プラス減損」を選択肢とする議論を活発化している。「減損のみ」に批判的なわが国にとっては,これは一見“追い風”に見えるが,本格的な無形資産会計基準がなく,20年を限度とする償却法を採用する日本基準には別の課題があり,同じ土俵では論じられない。いずれにせよ,“償却か減損か”と言う議論よりも,いま一度M&Aの原点に立ち帰って,コアのれん(被買収企業単独で,または買収企業と被買収企業との間で発生する価値の相乗効果)の中身と価値変化をKAM等で報告する方向へと議論を導くほうが,必要な処理を促進し,利害関係者の懸念を払拭する上ではるかに有効であろう。

以下,M&A交渉のプロセスに沿って,買収対価とのれんの関係,のれんの中身と価値変化に注目してみよう。

ここで言う買収対価とは,①被買収企業が持つ純資産の公正価値,②被買収企業単独のれん(有利な仕入・販売関係,優秀な経営者と従業員など),③買収企業と被買収企業との間で発生...