時事談論 vol.34「名言に考える会計ルールのメシア」

解説
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●「実務に使えるルールを作る」

金融ビッグバンの当時,企業会計審議会会長から「実務に使えるルールを作る」との意気込みを聞いて,会計に関わる当事者として,大変感銘を受けた覚えがある。特に自らの経営成績及び財政状態を財務諸表で開示する責任(Accountability)を有する制度においては,ルールに求められる重要な要素として,会計ルール利用者へのわかりやすさと納得感が大事と考える。アメリカにおける民事訴訟法のように,素人が生半端な知識で訴訟に参加すると大怪我をするのと同様なルールでは,ただでさえ適切に理解されていない「二重責任の原則」もその大前提で崩壊してしまう。また,会計ルールのわかりやすさは,経理担当がルールを適用して財務数値を作成する際の納得感にも繋がり,経営者による財務諸表数値への責任感の醸成にも通じる。会計ルールが置かれている悲惨な状態を羅列してみよう。

●会計ルールのコペルニクス的転回

MMT(Modern Monetary Theory=現代貨幣理論)の紹介記事を見て「学者の数ほど学説がある」という言葉を思い出した。会計ルールも時を経て,全く異なる結論になることが...