Special Interview 改正会社法の実務上のポイント 第1回 補償契約,D&O保険,社外取締役の業務執行
山口利昭法律事務所 代表弁護士 山口 利昭
<編集部より> 12月4日,改正会社法が参議院本会議で賛成多数により可決,成立した。主な改正内容は,「株主総会資料の電子提供制度の創設」,「株主提案権の濫用的な行使を制限するための規定の整備」,「取締役に対する報酬の付与や費用の補償等に関する規定の整備」,「監査役会設置会社における社外取締役の設置の義務付け」等。このうち,“識者の視点”から,特に注目する実務上のポイントを挙げて頂き,インタビューを行った。今回は,山口利昭弁護士に,補償契約,D&O保険,社外取締役の業務執行について聞いた。 |
法制化によって解釈を明確化
◆今回の改正内容のうち,特に注目されている点を挙げて頂けますか。
山口 特に私が注目している論点として,まず,「補償契約」および「D&O保険」を挙げさせて頂きます。
補償契約は,役員等に職務執行に関して発生した費用や損失の全部または一部を,会社が事前または事後に負担することを,役員等と会社の間で合意するものです。
現在でも,役員等が第三者から責任追及に関する請求を受けた場合等に,当該役員に過失がないときには,当該役員が対応に要した費用を民法上の委任事務に関する償還のルールに従って補償する実務処理が行われていました。しかし,補償の要件や範囲については解釈に委ねられている部分が多いため,適切な運用がなされるように会社法上の手当てがなされました。
D&O保険は,「役員等賠償責任保険契約」と称されるものです。会社を保険契約者,役員等を被保険者とする責任保険に関する契約であり,役員等がその地位に基づき損害賠償請求を起こされた場合の弁護士費用は訴訟費用等,および敗訴したときの責任額を填補するものです。
役員等が第三者から責任追及される場合だけでなく,株主から代表訴訟によって責任追及された場合の双方が填補されますが,モラルハザードを防止するために,役員等が私的な利益を得た場合や故意による法令違反が認められる場合には填補されません。
補償契約も,D&O保険の締結も,内容の決定および決定に至るプロセスについては,取締役会設置会社の場合には取締役会における承認決議が必要になります。
◆補償契約とD&O保険を挙げて頂いた理由を教えて下さい。
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