監査法人のローテーション制度について-「監査法人のローテーション制度に関する調査報告(第二次報告)」の概要-

解説

金融庁企画市場局企業開示課 課長補佐 高橋敦子

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2019年10月25日,金融庁は,「監査法人のローテーション制度に関する調査報告(第二次報告)」(以下,「第二次報告」という。)を公表した。

本稿では,我が国における監査法人のローテーション制度 をめぐる議論の経緯を振り返るとともに,第二次報告のポイントを説明することとしたい。なお,文中,意見にわたる部分は筆者の個人的な見解であることを予め申し添える。

一 監査法人のローテーション制度をめぐる議論の経緯

我が国では,監査法人のローテーション制度について,監査法人 の独立性を確保するための手段として,その導入の是非が議論されてきた。

2006年12月に金融審議会公認会計士制度部会が公表した報告書においては,監査法人のローテーション制度について,「監査人の独立性確保を徹底するとの観点から意義があるとの指摘がある一方で,ⅰ)監査人の知識・経験の蓄積の中断,ⅱ)監査人,被監査企業に生じる交代に伴うコスト,ⅲ)被監査企業の活動の国際化や監査業務における国際的な業務提携の進展等の中での国際的な整合性の確保,ⅳ)大規模監査法人の数が限定されている...