ハーフタイム 人間の欲望と社会システム

解説
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我々の生きる資本主義の社会では,欲望を是としている。映画「ウォール街」で主人公ゴードン・ゲッコーが「欲は善だ」と高らかに宣言したシーンが脳裏に刻まれている方も多いだろう。資本主義の社会は,欲望が活力となり,その活力により経済的行為を促され,多種多様な生産物が生み出され,そこから得られる便益により構成される社会で生きている。一方で,利潤(欲望からのアウトプット)の追求を目指す経済的行為の中にも一定の道理が必要であり,道理(道徳,人の道)と欲望がぴったりとバランスよくくっ付いていないと,衰退の一途を辿ることとなる。これは日本の資本主義の父といわれる渋沢栄一も指摘するところだ。

さて,昨今,新型感染症の脅威に端を発して,その資本主義の社会システムに歪みが生じつつある。資本主義の道理と欲望のバランスを欠いた状況が顕著になり始めている。目立つところでは,生活必需品の一部市民による買い占めや不当販売・転売などの「負の経済活動」がそれだ。利潤の最大化を目的とする私企業は,旺盛な経済的な需要に対しては即応する。つまり売って売りまくる。

やがて店頭から商品が消え,生産が追い付かずに,商品が他...