実務視点で読む 会計・監査裁判例 第2回 プロデュース社事件高裁判決(東京高判平成30・3・19)

解説

日本大学商学部 教授 紺野 卓

( 46頁)

1.裁判例のポイントと選者の視点

本件は,粉飾決算により上場後3年足らずで上場廃止となったプロデュース社(以下,P社)について,同社が提出した有価証券報告書等の虚偽記載により損害を被ったとして,P社株主である原告Xらが第1審被告である監査法人Y(以下Y:P社が上場する前後の期間で監査証明業務を行ったc監査法人を吸収合併)を 金商法21条22条24条の4 を根拠として,損害賠償を求めた集団訴訟である(東京高判平成30・3・19判時2374号56頁)。本件では,P社の代表取締役Aによる粉飾決算の実行とともに,c監査法人代表社員で監査証明業務を担当したBによる具体的な粉飾手法の助言又は指示があったことが認定されている。

原審はXらの請求を棄却したため,これを不服としてXらが控訴したのが本件である。東京高裁は,原判決を取り消してXらの請求の一部を認め,Yに対する約6億円余の損害賠償請求を認容した。本件はYについて金商法違反を認定している点,および損害の発生の立証責任等の基準を示した点で参考になる上,加えて監査法人のガバナンス上のリスク(ex.合併に伴う...