記念インタビュー Q&Aコーナー 気になる論点 10年の振り返りとこれから

解説

早稲田大学大学院 会計研究科教授 秋葉 賢一

-IFRSの指定国際会計基準化からリースまで-
( 18頁)

<編集部より>

本誌にて好評連載中の「Q&Aコーナー 気になる論点」は,2010年2月に第1回目が掲載されてから10年が経ちました。今回は,10周年企画として,著者の秋葉賢一先生に,掲載当時の状況を振り返り,また,そのトピックをめぐる現状などについてお話を伺いました。

IFRS強制適用に関する議論

――本日は,お忙しい中インタビューに応じて頂き,誠にありがとうございます。 第1回 (2010年2月22日号)は,「IFRS第9号と指定国際会計基準‐IFRS第9号はカーブアウトされないのか‐」 でした。これは,どういう背景であったのでしょうか。

秋葉 :2009年6月に,企業会計審議会から「我が国における国際会計基準の取扱いについて(中間報告)」が公表され,2010年3月期の連結財務諸表からIFRSの任意適用が認められました。2009年12月に連結財務諸表規則が改正され,これによって,2009年6月30日までに公表されていたIFRSが,指定国際会計基準とされたわけです。

さらに,金融庁は,2009年12月31日までに公表されたIFRSを指定国際会計基準とする案を,2010年1月20日付でパブリックコメントに付しており,その中には,2009年11月公表のIFRS第9号「金融商品」も含まれていました。この基準を,当時,EUは未だ受け入れておらず,また,米国では減損やヘッジ会計とあわせた金融商品全体の会計基準としてこれから公開草案としていく状況でした。

このため,指定国際会計基準とするのは時期尚早である,さらに,当期純利益を重視するという日本の立場からすれば,株主資本とのクリーンサープラス関係が維持されなくなるため,リサイクリングされないIFRS第9号を認めるべきではないという意見が容易に想定できることから,この案については,どのように考えればよいかを第1回目としました。

――それは,どのように考えればよかったのでしょうか。

秋葉:連結財務諸表規則93条やそのガイドライン93‐1は,基準開発におけるデュープロセスがポイントであって,その中身を吟味するものとはしていません。もっとも,第1回では,IFRS第9号の強制適用が2013年以後なので,それまではリサイクリングするIAS第39号「金融商品:認...