[全文公開] 金融庁 株主総会対応等「柔軟かつ適切に」

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新型コロナ対応の連絡協議会が声明文公表
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金融庁は「新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた企業決算・監査等への対応に係る連絡協議会」を4月10日(第2回)と15日(第3回)に開催した。第2回では現状況下の企業の決算業務・監査業務等について,政府の緊急事態宣言と緊急経済対策を踏まえた対応について現状の認識等を共有。第3回では,有価証券報告書等の提出期限の一律延長措置や株主総会に関する確認を行い,同日に声明文「新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた企業決算・監査及び株主総会の対応について」を公表した。株主総会の延期手法に「継続会」の開催があるが,その開催期間の考え方等を示すとともに,海外も含めた投資家に対して現下の各企業の窮状や継続会の取扱い等についての理解を求めている。

第2回は有報期限延長や総会延期手法を議論

4月10日の第2回連絡協議会においては,第1回に引き続き決算・監査対応について参加者間で現状の認識等の共有が図られた。企業会計基準委員会(ASBJ)は同日に4月9日の第429回本委員会の議事概要として「新型コロナウイルス感染症への対応(会計上の見積りを行う上での新型コロナウイルス感染症の影響の考え方)」を公表した旨報告。本状況下での会計上の見積りについて,企業が置いた一定の仮定(収束時期等)が明らかに不合理である場合を除き,最善の見積りを行った結果と事後的な結果との間に乖離が生じた場合でも会計上の「誤謬」にはあたらないとの考えなどを示した (本号5頁)

また,日本公認会計士協会(JICPA)は4月7日付で発出された会長声明「緊急事態宣言の発令に対する声明」で有報の提出期限等の一律延期の必要性に言及したこと,そして監査意見等にも触れた「新型コロナウイルス感染症に関連する監査上の留意事項(その2)」の公表予定(4月10日に公表済,4月15日にはその3を公表済。 本号6頁 )を報告した。

継続会の開催も総会延期手法のひとつ

4月15日の第3回では,金融庁が4月14日に「新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言を踏まえた有価証券報告書等の提出期限の延長について」を公表したこと等が報告された。また,同15日に連絡協議会名で声明文「新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた企業決算・監査及び株主総会の対応について」(次頁に全文掲載。メンバーは No.3453・2頁 )を公表することを議論し合意に至った。

声明文では,3月期決算業務と監査業務が進行中である現下において,この状況でこれら業務に大きな遅延が生じる可能性が高まっており,当初予定したスケジュールの形式的な遵守に「必要以上に拘泥することなく」従業員や監査業務に従事する者の安全確保に十分な配慮を行い,例年とは異なるスケジュールも想定して決算および監査業務の遂行が求められるとしている。株主総会の延期手法として例えば「続行」( 会社法317条 )が考えられ,決算が締まらない場合は当該議案について合理的な期間内に継続会を開催する等の方法を示すとともに,海外も含めた投資家に対し,これらの総会の取扱いや企業の窮状等に関する理解を求めている。

<重要資料>「新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた 企業決算・監査及び株主総会の対応について」

(金融庁「新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた企業決算・監査等への対応に係る連絡協議会」公表物より転載(別紙を除く))
新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた企業決算・監査等への対応に係る連絡協議会
令和2年4月15日

我が国企業の決算が最も集中する3月期決算業務と監査業務が進行中である現下において,新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて,これらの業務に大きな遅延が生じる可能性が高まっている。

関係者がこれらの業務を遂行する場合において,当初予定したスケジュールの形式的な遵守に必要以上に拘泥するときは,関係法令が確保しようとした実質的な趣旨をかえって没却することにもなりかねない。また,政府等からの外出自粛の要請への対応が徹底されない場合には,関係者の健康と安全が害されるリスクが高まることとなる。

こうした認識の下,当協議会は,関係者におかれて,以下の点を踏まえつつ,柔軟かつ適切に対応していくことを求める。

〇 企業及び監査法人においては,今般,有価証券報告書,四半期報告書等の提出期限について,9月末まで一律に延長する内閣府令改正が行われること等を踏まえ,従業員や監査業務に従事する者の安全確保に十分な配慮を行いながら,例年とは異なるスケジュールも想定して,決算及び監査の業務を遂行していくことが求められること。

その際,企業においては,3月期決算の場合は,通常6月末に開催される株主総会の運営に関し,以下の点を踏まえつつ,対応していくことが求められること。

‐株主総会運営に係るQ&A(経済産業省,法務省:令和2年4月2日)を踏まえ,新型コロナウイルス感染拡大防止のためにあらかじめ適切な措置を検討すること。

‐法令上,6月末に定時株主総会を開催することが求められているわけではなく,日程を後ろ倒しにすることは可能であること。

‐資金調達や経営判断を適時に行うために当初予定した時期に定時株主総会を開催する場合には,例えば,以下のような手続をとることも考えられること。

 ①  当初予定した時期に定時株主総会を開催し,続行( 会社法317条 )の決議を求める。当初の株主総会においては,取締役の選任等を決議するとともに,計算書類,監査報告等については,継続会において提供する旨の説明を行う。

 ②  企業及び監査法人においては,上記のとおり,安全確保に対する十分な配慮を行ったうえで決算業務,監査業務を遂行し,これらの業務が完了した後直ちに計算書類,監査報告等を株主に提供して株主による検討の機会を確保するとともに,当初の株主総会の後合理的な期間内に継続会を開催する。

 ③  継続会において,計算書類,監査報告等について十分な説明を尽くす。継続会の開催に際しても,必要に応じて開催通知を発送するなどして,株主に十分な周知を図る。

〇 投資家においては,投資先企業の持続的成長に資するよう,平時にもまして,長期的な視点からの財務の健全性確保の必要性などに留意することが求められるとともに,各企業の決算や監査の実施に係る現下の窮状を踏まえ,上記の定時株主総会・継続会の取扱い等についての理解が求められること。

以上