[全文公開] 金融庁 有報等の提出期限を一律9月末までに延長

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四半期報告書等も対象
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金融庁は4月14日,「新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言を踏まえた有価証券報告書等の提出期限の延長について」を公表した。新型コロナウイルス感染症の感染拡大により,4月7日に緊急事態宣言が発令された。これに伴い,今後3月決算企業をはじめとする多くの企業において決算業務や監査業務を例年どおりに進めることが困難になることが想定されることから,企業や監査法人が決算業務や監査業務のために十分な時間を確保できるよう,有価証券報告書等の提出期限については,企業側が個別の申請を行わなくとも,一律に今年9月末まで延長することとする。

臨報は事情解消後「可及的速やかに」提出を

麻生太郎副総理兼金融担当相は4月14日の閣議後会見で,企業や監査法人に十分な時間を確保するべく,有価証券報告書(有報)等の提出期限を一律9月末に延長する内閣府令の改正を行う旨を明らかにしており,その後,同日に金融庁より当該内容が公表された。

一律延期の対象は有報のほか,四半期報告書,半期報告書および親会社等状況報告書が想定されている。なお,提出期限の確定しない報告書である臨時報告書については,新型コロナウイルス感染症の影響により作成自体が行えない場合には,そのような事情が解消した後,「可及的速やかに」提出することで,遅滞なく提出したものと取り扱われることとなる。

JICPAは会社計算書類の延期も要請

有報は決算日後3カ月以内に提出することが求められているが,「やむを得ない理由」により当該期間内に提出できないと認められる場合には提出期限を延長することができる( 金融商品取引法24条 )。例えば以下の①~③の場合で,提出期限までに財務諸表等の作成が完了しない場合や,監査報告書を受領できない場合が挙げられる( 企業内容等開示ガイドライン24-13 )。①電力の供給が断たれた場合その他の理由により,会社のシステムが稼働できない,②過去提出分の有報等に重要な虚偽記載が発見されたが,その訂正が提出期限までに未了,③監査法人の監査により財務諸表等に誤謬または不正による重要な虚偽表示の疑義等が識別され,追加の監査手続きが必要な場合,など。

これまで災害時等には個別申請による対応が行われてきたが,新型コロナウイルス感染症の感染拡大により,かつてない規模で多くの企業や監査法人が通常通りの決算作業等が行えない状況にある。そのため,有報等の提出期限の一律延長の可能性についても,金融庁に設置された「連絡協議会」において情報共有・議論が進められていた (本号2頁)

例えば,連絡協議会のメンバーである日本公認会計士協会(JICPA)は,4月7日の会長声明で「大きな制約に直面している企業決算の現場と監査の現場の状況に鑑み,諸外国における措置と同様に」,有報の提出等について「その期限を一律に延長することが可能となる対応及び会社法に基づく定時株主総会の開催時期(特に,計算関係書類の報告期限)についても,一律に延期することが可能となる対応が必要」と要請していた。