ハーフタイム のれんの伝統的償却 論とDPのギャップ

解説

  

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IASBからのれんのディスカッションペーパー(DP)が公表された。償却も含めて両論併記されたとは言え,IASBの予備的見解は減損のみである。気になる点はいくつかある。

DPは,償却は重要な論点だとしながらも,この議論を前に進めるには,従来の議論の繰り返しではなく,これまでにない新たな知見や証拠が必要だと釘を刺している。日本が展開してきた伝統的な償却論は既に成熟しており,議論に新たな知見や証拠を付加する余地はあまりない。しかし,世界的なのれんの積み上がりはこの議論の重要性を示す新たな証拠である。我々のコメントが門前払いされないことを望む。

IASBは,IFRS第3号の適用後レビュー(PIR)において,のれんの減損の認識が遅すぎるという指摘を受け,減損テストの改善に着手した。しかし,これを断念し,PIRの対応策を開示の強化に絞った。この混乱の中でIASBの中でも償却論が再浮上し,8対6の評決を経て,DPの両論併記に至った。IASBにおける償却論は,メンバーごとに意見が異なるものの,基本的には,償却期間が主観的であっても,定額で減耗する証拠がなくても,償却はのれんを確実に減額する...