Q&Aコーナー 気になる論点(263) IASBにおけるのれんの議論(2)

解説

早稲田大学大学院 会計研究科教授 秋葉 賢一

‐のれんの償却‐
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 国際会計基準審議会(IASB)は,2020年3月19日付でディスカッション・ペーパー(DP)「企業結合―開示,のれん及び減損」(のれんDP)を公表しています(コメント期限:2020年9月15日)。のれんDPでは,現状どおり,のれんを償却しないことを提案しています。これは,償却が財務報告を著しく改善するという説得的な証拠がなかったからでしょうか。

のれんを償却しないというIASBの予備的見解は,償却が財務報告を著しく改善するという説得的な証拠がなかったことも理由の1つに挙げていますが,他の様々な理由を含め,この段階では,ボードメンバー14名中8名というギリギリの過半数の支持によるものです。

<解説>

のれんの償却(1)‐問題の所在

2004年に,IFRS第3号「企業結合」の公表とともにIAS第36号「資産の減損」が改正され,のれんの償却に代えて,年次の減損テストが導入されました。のれんDPでは,減損テストを合理的なコストで大幅に改善できないと結論付けたため①,IASBは,のれんの償却(amortisation)を再...