[全文公開] 法務省 ウェブ開示によるみなし提供制度の対象を拡大へ

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会社法施行規則等を改正
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法務省は5月12日,新型コロナウイルス感染拡大の影響を踏まえ,会社法施行規則および会社計算規則を改正することを公表した。施行日から6カ月以内に招集の手続きが開始される定時株主総会に係る事業報告および計算書類の提供に限り,ウェブ開示によるみなし提供制度の対象となる事項を拡大する。株式会社の決算・監査業務に遅延が生じることが懸念されていることを踏まえた。公布後,即日施行することを予定している(5月14日現在未公布)。

事業報告の一部などが対象に

新型コロナウイルスにより,当初の予定時期に株主総会を開催することができない可能性が高まっており,企業も延期等の検討が必要になっている。法務省はこれまで,定時株主総会の開催時期について「事業年度の終了後3か月以内に定時株主総会を開催することを求めているわけではありません」など,開催時期に関する見解を示してきた。

株主参考書類などについては,ウェブ開示によるみなし提供制度があるものの,電子提供可能な範囲は一部にとどまっている。今回の改正では,このみなし提供制度の対象となる事項の範囲を拡大。株式会社の決算・監査業務に遅延が生じることが懸念されている現状を踏まえ,緊急的かつ時限的な措置を講じる。具体的には以下の2点を対象とする。

・株式会社が事業年度の末日に公開会社である場合において事業報告に表示すべき事項のうち「当該事業年度における事業の経過及びその成果」( 会社法施行規則第120条 第1項第4号)および「対処すべき課題」(同項第8号)

・(単体の)貸借対照表および損益計算書に表示すべき事項

なお,ウェブ開示をする場合はその旨の定款の定めが必要となる(改正前の会社法規則等に基づきウェブ開示をする旨の定款の定めが既にある場合は除く)。貸借対照表および損益計算書に表示すべき事項については,会計監査報告に無限定適正意見が付されているなどの一定の条件を満たす場合のみ,対象となる。所定の期間,継続してインターネット上のウェブサイトに掲載し,そのURLを株主に通知すれば株主に提供されたものとみなす。

株主の利益への配慮も必要

株主の利益への配慮も促している。改正前の会社法施行規則等ではみなし提供制度の対象とされていなかった事項を対象とするため,ウェブ開示をする場合には「株主の利益を不当に害することがないよう特に配慮しなければならないこととすること」を予定しているという。

ウェブ開示は,事業報告等の株主総会の招集に際して提供すべき書類について,株主に対する書面等による提供に代えて,事業報告等に含めるべき事項をホームページに掲載する開示方法。株式総会参考書類や事業報告の一部,計算書類の個別注記表,連結計算書類などが対象となっている。

なお,2019年12月公布の令和元年会社法改正では,上場会社に対して総会資料の電子提供が義務付けられることとなった( No.3451・47頁 下段)。