時事談論 vol.56「専門家の存在意義」

解説
( 60頁)

●専門家に聴く

新型コロナウイルス感染症の問題で,連日のように,TVのニュースやワイドショー等に専門家が登場している。専門家は,自粛を求め,行動変容の必要性を訴え,中には,PCR検査の全面的な実施を主張したり,何週間後には何万人の感染者が出ると予測したりもする。私たち一般庶民は,感染症に精通しているわけでもなく,厚生労働省が把握している様々な実態データにアクセスすることができるわけでもないため,彼らの発言を拝聴することしかできない。

しかしながら,連日の報道や,海外からの情報,ネットでの議論等を通じて,私たちの側にも,一定の知見が形成され,専門家の発言に疑問をもったり,自分たち自身の意見を有するようになったりする。「ギリギリとはどういうことなのか」「感染者数が増加しているのは,PCR検査数の増加に伴うもので,重症者・死亡者は増えていないのではないか」「命か経済かといった二者択一ではなく,経済も回していかなくては取り返しがつかなくなるのではないか」等々。

ここで感染症の専門家について論じるつもりはないが,敢えて言うなら,実証データに基づかない(反する)議論や,視聴者の感情にだけ...