書評 孫 美■著『会計の国際化と制度設計』

解説

 国際会計基準審議会(IASB)前理事 鶯地 隆継

(中央経済社刊/本体4,600円+税)
( 52頁)

新鮮な驚き

ページを開いて全体の構成を見た瞬間,大変新鮮な驚きがあった。私自身長い間IASB(国際会計基準審議会)の理事を務めていた関係で,会計の国際化や制度設計に係る多くの書籍に触れる機会があったが,本書はそれらの書籍とは全く違った観点から書かれていた。通常,会計の国際化という話は,米国会計基準やIFRS(国際財務報告基準)の発展の歴史と日本との関係について議論が展開されているものが多かったのであるが,本書ではまず中国における会計制度改革の視点から考察されている。

中国は共産主義国家であり,米国や欧州,そして日本とも異なる社会システムを持っている。中国が開放経済に舵を切ったのは40年ほど前で,その比較的短い期間の中でどのような葛藤を乗り越えて今に至ったのかという分析は一読に値する。著者はその分析を通して,国際化の本質とは何かという命題に迫っている。日本人の多くの人にとって,国際化とはすなわち欧米化であったような気がする。それは,中国にとってもある程度は同じであったのだが,中国では異なる社...