ハーフタイム コロナ・パンデミックのあと、会計と財務はどう変わるか

解説
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新型コロナウイルスの感染者がグローバルに増え続けている。しかもウイルスの全容解明もなかなか進まず,新薬開発の目途も立っていない。こうした状況下で,収縮する経済リスクに対応する企業では,会計方針と財務戦略はどう変わるだろうか。

ここでいう会計方針とは,目下話題の減損や引当金ルールへの柔軟対応ではなく,経営の根幹を左右する基本方針である。まず取り上げるのは「保守主義(慎重性)の原則」。IFRS概念フレームワークでは,財務情報の中立性に反するという理由から,この原則は一時的に削除されたが,実務界の要請により,将来予測における慎重性(prudence)という形で復活した。しかも金融危機の反省から,予想信用損失引当金制度が導入された。

制度はどうであれ,リスクとチャンスに満ちた現実界では,保守主義(慎重性)の原則によって,辛うじて中立を維持できることが,コロナショックで改めて確認できる。認知心理学がいうように,人間は見たいもの(利得)は見るが,見たくないもの(損失)は見(え)ないからであり,その例証は金融危機後の米国6大金融機関の動向からも得られる。

四半期ごとの貸倒引当金設定額をみる...