ハーフタイム 政府債務と企業債務はどう異なるか~企業会計からみて~

解説
( 43頁)

コロナ・パンデミックは,われわれの日常を変え,新常態を生む。それだけではない,従来の経済システムに内在していた問題点を明るみに出し,早急な対応を迫る力がある。

まず日本からみて行こう。日銀が物価2%を目指して“異次元”金融緩和を始めたのは7年前。その後も企業のインフレ期待や資金需要は高まらず,相変わらずデフレ傾向が続いてきた。主流派経済学者から“実態経済に何ら影響を与えることはできていない”とか“金融政策は死んだ”と批判されてきた。銀行が保有する国債を買い取る金融拡大策は,“財政赤字ファイナンス(中央銀行が財政赤字を負担)”だとか,“低利政策は政府債務を拡大し財政再建への取り組みを遅らせている”と非難されてきた。すでに長期停滞期に入ったわが国では,企業の資金需要はなかなか増えず,過去7年間の経済は“笛吹けど蛇踊らず”だった。

他方,コロナ禍によって未曾有の経済危機が始まるや否や,累積財政赤字は世界的にも歴史的にも最大規模に達していたにもかかわらず,政府はまず約25兆円の一次補正予算を組み,国民一人当たり10万円の特別給付などを始めた。

ところが,政府債務の膨張と異次元金融緩和...