Q&Aコーナー 気になる論点(266) 金融機関における信用損失の会計処理

解説

早稲田大学大学院 会計研究科教授 秋葉 賢一

‐JICPA実務指針の改正‐
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日本公認会計士協会(JICPA)は,2020年3月17日付で銀行等監査特別委員会報告第4号「銀行等金融機関の資産の自己査定並びに貸倒償却及び貸倒引当金の監査に関する実務指針」(以下「実務指針」)を改正しています。金融検査マニュアルの廃止を受けた当該改正により,金融機関については,IFRS第9号「金融商品」における予想信用損失モデルと同様の考え方が導入されたのでしょうか。

金融検査マニュアルの廃止後も,債権区分ごとに貸倒見積高を算定する企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」に変更はありません。なお,企業会計基準委員会(ASBJ)が2020年6月3日に公表した「現在開発中の会計基準に関する今後の計画」では,2019年10月に,予想信用損失モデルに基づく金融資産の減損についての会計基準の開発に着手することを決定した(ただし,開発の目標時期は特に定めていない)としています。

<解説>

実務指針の位置づけ

実務指針は,早期是正措置に伴って導入される自己査定体制の整備状況の妥当性及び自己査定基準への準拠性...