企業内容開示制度の実効性確保に向けて 第4回 企業価値向上を実現する役員報酬ガバナンスと開示のあり方

デロイト トーマツ コンサルティング合同会社  村中 靖

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本企画では,企業内容開示制度の実効性確保に向けた課題や今後の取り組みの方向性について,全8回にわたって解説することとしている。第4回の本稿では,役員報酬を取り巻く環境や,わが国の役員報酬ガバナンスの現状を踏まえ,企業価値向上に必要となる,あるべき役員報酬制度や開示規制について考察する。なお,文中意見にわたる部分は筆者の個人的な見解であり,有限責任監査法人トーマツおよびデロイト トーマツ コンサルティングの公式見解でないことを予め申し上げる。

1.役員報酬を取り巻く環境

わが国における役員報酬の決定や運用は,これまで以上に社会からの厳しい視線にさらされている。その直接的なきっかけは,2015年の東京証券取引所によるコーポレートガバナンス・コード(以下,CGコード)の導入である(2018年に改訂)。 日系企業における役員報酬決定の一般的なプロセスは,株主による報酬総額(枠)等の承認を受けた後,社長に報酬決定を一任するという形である。事実,デロイト トーマツ コンサルティング(以下,当社)が実施した,日本最大の規模を誇る「役員報酬サーベイ①」においても,社長に報酬決定を一任する企業が50%以上を...