新型コロナウイルス感染症の影響下での株主総会

~2020年6月の定時株主総会を振り返って~

西村あさひ法律事務所 弁護士 髙木 弘明

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1.はじめに

2020年6月の定時株主総会は,新型コロナウイルス感染症(以下「新型コロナ」という)の影響が続く中,例年とは全く異なる観点からの対応が必要となった。そのため,昨年までの大きな傾向であった対話重視・情報発信型の株主総会とは大きく異なった総会運営が模索されたが,その副次的な効果として,議決権基準日の定め方,総会会場への株主の来場制限の可否等,株主総会に係る法制度や実務の根幹に関する論点が顕在化することともなった。本稿では,2020年6月の定時株主総会が例年と比べて特異であった点を中心に,その実態を振り返る

2.決算確定の遅延に伴う株主総会の日程への影響

(1) 継続会の実施

本年2月以降,新型コロナの感染が世界的に急拡大し,各国で緊急事態宣言や外出禁止令が相次いで出される中,各企業の連結決算作業,特に海外子会社関連の決算作業が大きく遅延した。また,国内でも本年4月7日に政府から緊急事態宣言が発出された影響を受け,監査を担当する公認会計士や各企業の経理担当者が一定程度の在宅勤務を強いられるなどしたことから,各社において決算及び会計監査の日程が当初予定から大きく遅延し,当初予定してい...