Q&Aコーナー 気になる論点(276) サステナビリティ基準を巡る動き(1)

‐IFRS財団と諸団体との関係‐

早稲田大学大学院 会計研究科教授 秋葉 賢一

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 IFRS財団は,2020年9月30日に,「サステナビリティ報告に関する協議ペーパー」(協議ペーパー)を公表し,サステナビリティ基準審議会(SSB)の設置に関してコメントを募集しています(期限:2020年12月31日)。他方,サステナビリティ報告に関する主要な5団体は,2020年9月11日に「包括的な企業報告に向けた共同作業に関するステートメント」(5団体ステートメント)を公表しました。これらの動きは連動しているのでしょうか。

主要な5団体は,サステナビリティ開示基準設定主体として,協力を強調していますが,IFRS財団のSSB設置案では,さらに統合を進めることが示唆されています。

<解説>

協議ペーパー(1)‐背景

IFRS財団の定款17条により,評議員会(Trustees)は,少なくとも5年ごとに,IFRS財団の戦略レビューを行う必要があります。評議員会は,現在,2021年に向けて戦略レビューを行っており,その一環として,2020年9月に協議ペーパーを公表しています。

評議員会は,2019年1月から当該レビューを開始し,幅広い企業報告(wider corporate reporting),...