KAMの早期適用に関する座談会―監査人編―

有限責任 あずさ監査法人  神塚 勲
有限責任監査法人トーマツ  郷田 英仁
PwCあらた有限責任監査法人  小林 昭夫
太陽有限責任監査法人  柴谷 哲朗
EY新日本有限責任監査法人院  持永 勇一
[司会・進行]青山学院大学大学院  町田 祥弘

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監査上の主要な検討事項(以下,「KAM」)について,前号( No.3482・10頁 )では,財務諸表利用者であるアナリストの皆さんに,KAMの早期適用状況についての評価や,利用者の立場から見た「Good KAM」「Bad KAM」,今後への期待などについて伺いました。今号は「監査人編」として,実際に「Good KAM」として挙げられたKAMを書かれた監査人の皆さんにお集まりいただき,実務から得られた知見をはじめ,適用2年目に向けて検討すべきこと,今後のディスクロージャー制度全体の発展に必要なことなどについてお話しいただきました。

1.早期適用に対する全体的な評価

町田祥弘氏(以下,町田) :本日は,早期適用のKAMを実際に書かれた監査人の先生方にお集まりいただきました。早期適用の状況を踏まえて様々なご意見やご感想をお聞かせいただければと思います。

KAMを早期適用した上場会社は,9月末時点で46社(非上場企業を含めると49社) ありました。まず,早期適用の会社数,KAMの個数,記載内容など全体を含めて,先生方がどのように評価されたかをお聞かせください。

小林昭夫氏(以下,小林) :当初考えていた数よりかなり少なかったと思っています。コロナ禍での監査業務ということで困難を極めたと思いますが,そのような状況であるからこそ会社側の積極的な情報開示が求められたわけですから,全体としてもう少し,積極的な姿勢があっても良かったのではないでしょうか。

神塚勲(かみづか・いさお)
あずさ監査法人 常務執行理事 パートナー 公認会計士
慶応義塾大学卒業。1995年 センチュリー監査法人(現あずさ監査法人)に入所後,KPMG香港,米国アトランタ事務所に赴任。総合商社,自動車,製造業等国内外の大手グローバル企業に対する日本基準,米国基準(SEC登録企業含む)及び国際会計基準に基づく財務諸表監査に従事。

郷田英仁氏(以下,郷田) :小林先生のお話と重複する部分もありますが,上場会社数が全体で約4,000社弱あることを考えると,早期適用会社数がそのうちの約1%強に留まったというのはやはり少なかったと思います。もちろん,それにはコロナ禍の困難な監査環境が影響した部分があったとは思います。

クオリティに関して言えば,コロナ禍でも早期適用した会社のKAMは,比較的高品質なものが多かったと思います。これは,ヨーロッパや米国(...