これでわかった!「会計上の見積りの開示」 第2回 開示内容決定にあたっての判断のポイント

 公認会計士 山田善隆

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1.はじめに

本連載では,企業が企業会計基準第31号「 会計上の見積りの開示に関する会計基準 」(以下,「見積り開示基準」という)の趣旨に即した対応を行うためのヒントとなるように,多面的な視点からの解説を試みている。

今回は,前回( No.3484 参照)検討した会計上の見積りの性質と見積リスクに関する理解を前提に,見積り開示基準に基づく開示内容の決定における判断のポイントを参考となる開示例とともに紹介したい。

なお,文中の意見にわたる部分は,筆者の私見であることをあらかじめ申し添える。

2.見積り開示基準の「開示目的」

見積り開示基準は,IFRS(IAS第1号125項)と同様の要求事項を我が国の会計基準に導入する趣旨で開発された基準であり,「翌年度の財務諸表に重要な影響を及ぼすリスク」(以下,「見積リスク」と呼ぶ)がある会計上の見積り項目について,その内容を財務諸表利用者が理解できるような情報を開示することを目的としている。

また,「開発にあたっての基本的な方針」は,「原則(開示目的)を示したうえで,具体的な開示内容は企業が開示目的に照らして判断することとした」としており[見積り開示基準14項],その適...