Q&Aコーナー 気になる論点(277) サステナビリティ基準を巡る動き(2)

‐気候第一アプローチ‐

早稲田大学大学院 会計研究科教授 秋葉 賢一

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 IFRS財団が2020年9月30日に公表した「サステナビリティ報告に関する協議ペーパー」(協議ペーパー)では,サステナビリティ基準審議会(SSB)を設立するとした場合には,まず気候関連リスクの開示を優先させる気候第一アプローチの方向性を示しています。これは,なぜでしょうか。

協議ペーパーでは,気候関連情報についての国際的なサステナビリティ報告基準の開発が,最も切迫した懸念事項であり,気候リスクは,投資者や規制当局にとって重要度が増している財務的リスクであることによるとしています。

<解説>

問題の所在

協議ペーパーでは,多くの団体が,サステナビリティ報告のフレームワークや基準,指標を提供し(11項),また,これらの対象者も様々であるとしています(12項)。アプローチや目的の相違により,断片化(fragmentation)がグローバルに拡大するおそれがあり,また,複数のフレームワークや基準が任意に使用されており,これらは,一貫性や比較可能性の向上と複雑性の低減を図る必要があることを示しているとしています(14項‐15項)。

サステナビリティ基準審議会(SSB)の設置

評議員会は,IFRS財団が...