新春インタビュー 国税庁・可部長官に聞く

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本誌は,可部哲生・国税庁長官に新春インタビューを行った。2021年(令和3年)の抱負や税務行政のデジタル化に向けた取組みなどを聞いた。

税務行政の展望を語った
可部長官

――新年の抱負をお聞かせください。

令和3年の年頭に当たり,謹んで新年のご挨拶を申し上げます。

昨年は新型コロナウイルス感染症の感染拡大により,経済・社会全体が多大な影響を受け,現在においても前例のない極めて厳しい状況が続いていると認識をしております。

これから確定申告期を迎えますが,感染拡大防止の観点からもご自宅等からのe-Taxの利用をこれまで以上に推進し,感染防止に配慮した確定申告会場の運営を行った上で,会場における混雑を避けるための取組みをしっかりと進め,的確な運営がなされるよう万全を期したいと考えております。

――税務行政のデジタル化推進についてお聞かせください。

税務行政のデジタルトランスフォーメーションにつきましては,納税者の利便性の向上という観点と,課税・徴収事務の効率化・高度化を図るという観点の両面から積極的に推進していく必要があると考えております。

国税庁では,平成31年には従来のパソコンからのe-Tax送信に加え,スマートフォンを利用して確定申告ができる環境を整備しました。令和2年には,年末調整関係書類を電子的に取得できるソフトの提供を開始したほか,チャットボットによる税務相談も導入しました。法人税申告に関しては,大法人について,令和2年4月以降に始まる事業年度の申告から電子申告の義務化が図られております。

こうした取組みに加えて,コロナ禍で,社会全体としてデジタル化を進めていくことの重要性が再認識されたと思います。

税務行政には,大量の書類を扱っているイメージもあるかと思います。例えば,納税者の方は,日ごろ取引や記帳があり,それらに基づいて申告を行っていただきます。それを受け付ける側の税務署では入力や審査に関する事務が生じます。こうした作業すべてをデジタル化すると,官民双方において業務の大幅な合理化が図られると思います。

押印の見直しはデジタル化を進める前提になります。これまで納税者の方に押印を求めていた手続では,原則として押印を廃止することといたしました。ただし,政府全体の方針として,実印と印鑑証明を求めている手続については継続する方向です。いずれにしても大事なのは,これまで紙で行われていたやり取...